2009年03月02日

[知財一般]顧客参加型イノベーション

商品開発に顧客を巻き込む(Enroll)することの利点に触れる意見をちょくちょく見かける。新たなオープン・イノベーションのステップとして評価する意見もあるくらいだ(注1)(ただし、ただ顧客の意見を吸い上げるというのではチェスブローのいうオープン・イノベーションにあたらないのは明らかで、オープン・イノベーションの言う顧客参加とは、より開発の深い領域に顧客が直接関わっていく、という意味だろう)。

ただし、技術開発に関わるのはなかなかに難しい。技術開発への顧客の参加が現実に機能しているのはオープンソースソフトウエアくらいかもしれない。他方、デザイン開発への参加の余地は少なくない(注2)。LEGO社などでは実際に顧客参加型のデザイン開発が行われているようだ。

このような顧客参加を支えているのが、創作活動のインセンティブが「金銭」に限られない、というところにある。同時に、企業側には、企業戦略などが漏れてしまうリスク以上の利点があるというところにもある。なお、企業側にとっては、秘密漏洩のリスクを参加ポリシーをガチガチにして提言することも出来るが、そうすると、そもそもの顧客の参加を阻害するため、望ましい結論にならない点には留意が必要だろう。

前者の点は、著作権の世界では意識されてきている(注3)が、どうしても「権利者の権利制限」の文脈の中で捉えられがちで、否定的に見る意見も根強い。著作権以外の世界でも意義が見いだされている、というところは注目したい。

ただ、このような活動、とりわけ、デザイン開発に顧客が深く関与した場合で、その成果が意匠権として出願されることとなる場合、実務上、発明者認定がややこしくなることは注意しなくてはいけない(注4)。

(注1)Jacques R.Bughin et al, The next step in open innovation, 2008 No.4 The McKinsey Quarterly, 2008, p.113-p.122.
(注2)Rita Mcgraph, "Involve Your Customers in Design Decisions", Harvard Bussiness.org (Article published on Feb. 3 2009)
(注3)中山信弘=三山裕三「対談 デジタルネット時代における著作権のあり方(下)」NBL899号(2009年)49頁。
(注4)特許の発明者認定の話であるが参考なる研究書として、工藤敏隆『発明者の認定基準、及び発明者の認定に関する紛争手続き』(財団法人知的財産研究所、2006年)。なお、その要点は、鈴木將文「共同研究の成果の権利化及び活用を巡る法的諸問題」財団法人知的財産研究所『特許の経営・経済分析』(雄松堂、2006年)350頁。
posted by かんぞう at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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