2009年02月28日

[著作権]国際条約を破る自由

中山信弘=三山裕三「対談 デジタルネット時代における著作権のあり方(上)(下)」NBL898号(2009年)20頁-26頁、NBL890号(2009年)48頁-54頁読書メモ

中山名誉教授と三山弁護士の対談に興味深い話題が触れられている。要旨は以下の通り(なお、要旨は筆者の責任でまとめた)(注1)。
国際条約を遵守しなかったとしても、WTOへの提訴を経てリタリエーションを行われることになるが、国益に叶うのであれば遵守しないことも選択肢である。著作権制度において、条約の文言に沿うことに神経質になり、情報流通を阻害するとすれば、それは国益にそぐわない(注2)。


私はこの指摘に賛成する。
では、仮に著作権制度において国際条約を破る立法を志向したときに何を乗り越えらなければいけないのだろうか。

本来的には国際条約を国内法化するか否かは政治的決定にゆだねられているはずであるが、著作権に関しては政治家が取り上げる動機が乏しいため(注3)、所管官庁の意思が影響を与えているものと考えられる。

政治過程の実証研究によると、中央官庁は一般に組織存続(につながる行動)を選好としているとの研究結果がある(注4)。
それに基づく研究によると、文化庁においては、
−著作権法規定間の整合性の確保(事務的コストを下げると共に、政治介入を防ぐことができるため)
−国際条約との整合性確保
を嗜好しているとの仮説を立てるとこれまでの立法過程が説明できるようだ(注5)。

そうだとすると、現状では、文化庁の原課に、国際条約を破ることも受容できるようにすることが妥当な方法となる。もちろん、パブコメで意見を伝えるというのもあるだろうが、彼らが恐れる不合理な政治介入を防ぐよう、政治をウォッチすることも求められるのかもしれない。

(注1)中山信弘=三山裕三「対談 デジタルネット時代における著作権のあり方(上)(下)」NBL898号(2009年)26頁。
(注2)なお、樋口範雄「契約を破る自由について」アメリカ法217号(1983年)40頁以下(同『アメリカ契約法 第2版』(弘文堂、2008年)にも納められているはず…)を紹介されていた。
(注3)京俊介「著作権政策形成過程の分析(一) ―利益団体,審議会,官庁の行動による法改正メカニズムの説明―」阪大法学57巻2号(2007年)326頁脚注34。
(注4)戸谷哲郎(青木昌彦完訳・戸谷理衣奈訳)『金融ビッグバンの政治経済学』(東洋経済新法社、2003年)。
(注5)京俊介「政策形成に対する利益集団の影響力―著作権法全面改正における事例間比較−」阪大法学58巻5号(2009年)263頁以下。
posted by かんぞう at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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