2009年02月25日

[時事]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否(その3)

本ブログ2008年2月18日記事「[時事]歴史上の著名人の氏名の顧客吸引力の独占の可否」で「吉田松陰」の名が商標登録されたことに触れたが、新たに「大隈重信」に商標登録出願された例が登場した(ただし、本件は出願に留まっている)。
毎日新聞2009年2月24日記事より一部引用
早大創設者で元首相の大隈重信(1838〜1922)の名前を、福島県須賀川市の食品卸小売会社が特許庁に商標登録申請していることが24日分かった。早大は「看過できない」として、特許庁に登録を認めないよう要請する。
特許庁によると、申請は昨年7月1日付で、商品の種類は日本酒、洋酒、果実酒など。


現在、経済産業省産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会で審議されている審査基準の骨子案(注1)によると、
著名な歴史上の人物名等の商標について、例えば、当該人物の著名性・評価を自己の事業のために利用する意図又はその名声を僭用して利益を得る意図があること、地域の産業に悪影響を与え公正な取引秩序を乱すおそれがあること、また、名声や名誉を害するおそれがあり遺族の心情を害するおそれがあることが認められる場合には、商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)に該当することとする。
とのことである。

本件は、地域の産業に悪影響を与えるものでない可能性が高いと思われるが、他方、名声や名誉を害するおそれがあり遺族の心情を害するおそれがあるか否かについては死後80年ということがきわめて微妙である限界事例と思わる(注2)。大変興味深い。

議事録を読むと、本審査基準骨子案が正式にリリースされるのは平成24年頃というようなことも窺えるが、今回の審査において特許庁が積極的に判断する可能性が無いわけでない。注目したい。

…という記事を書こうとしていたら、
(asahi.com 2009年2月25日記事)
福島県須賀川市の食料品卸会社ダイトウ・ライフは、元首相で早稲田大学の創設者・大隈重信(1838〜1922)の名前を特許庁に商標登録出願したが、同大や大隈重信の出身地・佐賀市などが反発していることなどから、25日に出願を取り下げた。
という発表がなされた。故人の名称での商標登録はIPDLを叩いてみると少なからずあるのだが、近年の出願例が乏しい。見直しの方向性を受けて判断がどうなるか興味があっただけに残念。

(注1)産業構造審議会知的財産政策部会第19回商標制度小委員会配付資料6-1「歴史上の人物名等の商標審査の方向性(案)」(2008年)3頁。
(注2)名誉毀損事案、(生存中であれば)著作者人格権侵害事案を簡単に見てみると、死後20年で争われた事件が散見されるのみである。(なお、これらの事案では、敬愛追慕の情の保護は肯定されていた)
posted by かんぞう at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/114766365
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。