2009年02月26日

著作権法42条2項(裁判手続等における複製、とりわけ、特許出願、薬事審査に おける複製に対する権利制限)の解釈について

南亮一「最近の著作権法の改正動向について―学術情報を中心として―」情報管理50巻12号(2008年)816頁-824頁読書メモ

国立国会図書館の南亮一さんの論考は、著作権法改正の経緯と動向を詳説されているものだが、その中に、著作権法42条2項の立法経緯を解説するだけでなく、解釈上の論点を示していらっしゃり、参考となった。

■行政庁に提出するものに限られるか否か
著作権法42条2項については、行政庁に提出するものに限り無許諾での複製が許容されるのかが解釈上の論点となりうる。

現在のところ、立法者(所管官庁の原課である文部科学省文化庁長官官房著作権課)は、同項は42条1項にいう「行政の内部資料として必要と認められる場合」の拡大規定であって、あくまで行政庁に提出するもののみに限定するべきとの立場を示している(注1)。

これに対して、南さんは、文化庁著作権審議会法制小委員会で行政庁に提出するもののみに限定すべきとの議論と合意がなされたのは、特許審査手続に関する場合のみであることに触れた上で、
・薬事関係文献の提出では、関連文献を収集した後提出文献を選択しているという実態があることを指摘し、未提出文献は廃棄を条件として42条2項の権利制限の対象に含めるべきとの考えを示されている(注2)。

私は直観的には南さんの解釈の結論には引きつけられるものがあるが、解釈上の根拠が十分でないのではないと考える。
特許審査にあたっても、必要な技術文献を調査しているであろうし、調査に当たって文献の複製を行っていることが少なくないだろう。
そうすると、実態は決定的な理由にならないのではないだろうか。

薬事審査については、国民の健康を保護する等の何らかの優越的な価値を持ち出せばよいように思われるかもしれない。だが、そもそも、この解釈の違い意味を持つのは、
ー個人が薬事申請を行う場合(提出目的であるため私的複製にならない可能性が高い)
ー文献の複製の後、提出文献を選択する場合
に限られているように思われる。

提出前に行われる文献の精査段階では、複製を伴わず原典にあたるか、あるいは、権利処理をして複製をしているはずである(注3)。そうすると、未提出文献についても権利制限を認めることによる利益は限定的である。

他方、特許審査にせよ、薬事審査にせよ、それに提出される文献の量が多いことから、本規定は著作者の利益との衡量から限定的に利用されるべきとの意見がある(注4)ことに鑑みると、私は、立法者の解釈に立つことを妥当と考える。

なお、42条2項は、より積極的に解釈して、試験研究の例外のような位置づけと読むこともあり得るかもしれない。そう解釈するのであれば提出の有無は問われないこととなる。ただし、そうするとなぜ42条に設けたかについては説明が難しい。

(注1)文化庁長官官房著作権課「解説 著作権法の一部を改正する法律について」コピライト551号(2007年)34頁。
(注2)南亮一「最近の著作権法の改正動向について―学術情報を中心として―」情報管理50巻12号(2008年)821頁。
(注3)タテマエだ、と言われればそうなのかもしれないが…。
(注4)半田正夫・松田政行編『著作権法コンメンタール 2 23条~90条の3』(勁草書房、2009年)349頁。
posted by かんぞう at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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