2009年02月23日

[時事]Google Book Searchを巡る争訟が残したもの

書籍の一部を閲覧(かつ検索)可能な形にしてインターネット上で公開するGoogleに対して、米作家協会(Authors Guild)と米国出版社協会(Association of American Publishers)が当該行為は著作権侵害にあたるとして訴訟を提起していたが、2008年10月28日、Google側が著作者と出版社に使用料を支払うことで和解がなされた。

この使用料支払いの対象には絶版になったものも含んでいる(むしろ、ほとんどが絶版という話をきく)であるため、絶版書籍のオープンアクセスを願う考え方の人たちにとっては、望ましくない先例であると言うことが出来る。これまで、絶版した書籍は著作者が当該著作から利益を得ることを放棄している(注1)と捉えられてきた。そこに経済的活用の芽を見いだしたことは望ましいことだと私は思うのだが、これまで絶版書籍へのアクセスを保障してきた図書館の側から見ると、自身の役割が損なわれるだけでなく、事実上、情報へのアクセスを阻害してしまう可能性があるのかもしれない。

事実上、情報へのアクセスを阻害してしまう可能性とは、こういうロジックで考えられる。
著作者等が、今、公衆に伝えたい情報は、仮に著作者へ完全な利益配分が行われなくても、図書館等で閲覧可能になることは、ある種の宣伝(これは著作物の販売につながる、というだけでなく、著作の内容を広く知らしめるという意味でも用いている)となり、著作者にはそれなりにメリットがある。
他方、絶版となったようなものは、目立った利益は著作者には生じない。ニーズもニッチなものになりがちである(例えば、歴史研究など)。そうすると、著作者が当該著作から他に経済的利益を得る道があると、図書館でアクセスされることを拒むようになる(公共図書館の役割に対して否定的なロビイングを行うようになる)、というものだ(注2)。

そもそもこういう恐れは杞憂かもしれないし、日本であれば国立国会図書館を通じて依然としてアクセスの道は保たれているのでたいした弊害はないとは思う。だが、念のため気にはしておきたい、と感じる。

(注1)実際には出版社が決定しているのかもしれないが…。
(注2)このような可能性は、Jeff Erwin, Copyright and the Digital Library, available at hereにヒントを得た。なお、この論文は、申し訳ないのだが、たいした考察を含んでいないのではないだろうか。『情報管理』で取り上げられていたので読んでみたのだが、エッセイ程度のもので、論文と言えるようなきちんとした検討があるものではなかった。
posted by かんぞう at 01:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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