2009年01月04日

[知財一般]大学と知的財産:知的財産権確保とコモンズ、戦略として双方の選択をもっと明示的に許容することもいいのでは?

■大学は知的財産権取得で評価される
日本版バイドール法(注1)が1999年に施行され、さらに、国立大学法人化が2004年に行われたことで、大学での研究成果に係る知的財産権の取得は一気に促されることになった。

以後、大学のパフォーマンスの指針として特許権の取得状況が用いられることも散見されるようになり、個別のプロジェクトの評価においても知的財産権の取得状況が評価指標とされるようになったように思われる。これは、大学における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進を求める国の方針(注2)に沿うものといえる。

■質で評価するときには要注意
これらの場合、主には「量」を見ることが多い。そうすると、クズ特許が多数出願されるだけに終わる可能性がある。そこで、「質」の議論を行うべきとの意見も見られる。だが、「質」をどのようにとらえるかは難しい。

「質」を計る際に、ライセンス料を評価指標にすることが考えられる。しかし、そうすると、圧倒的に強い研究資源を有する大学は、交渉上の優位さを利用して多額のライセンス料支払いを求めるようになるかもしれない。また、標準技術に含まれた特許権を行使して、多額のロイヤリティ確保を目指すこともあるかもしれない(注3)。これらは知的財産権制度の上では仕方ないことであるし、企業間では当たり前であるのだからいいではないか、という見方もあるかもしれないが、技術移転を本当に促進しているのか、という点では疑問が生じる。

■特許権取得はそもそも技術移転に適っていない可能性もある
日本版バイドールが目指すところである技術移転は、そのチャネルとして、@特許権、A論文、B学会発表(以上、形式知としての移転)、C共同研究、D交流会(以上、暗黙知としての移転)があるとされる。技術の専有可能性が高い分野(化学など)では、@も極めて有効なチャネルと考えられるが、カーネギーメロン大学が企業研究開発担当者に行ったアンケートでは、そのような産業においても会話や学会発表の方が有効と答えられていた、との結果が報告されている(注4)。

知的財産権の取得を促したために、研究成果の秘匿化が進むと、かえって技術移転を阻害するとの意見もある(注5)。

本当にそうなっているのかは十分な検証が必要であるが、一律に知的財産権の取得を大学に促している状況では確かめようがない。

■大学に研究成果のコモンズ戦略をとることを許容してはどうか?
また、大学によっては十分なマンパワーがなく、研究成果の適切な保全や、知的財産取得に結びつけていない可能性もある。

そうであるならば、大学の知的財産権の取得が技術移転に資するものか、それはどの技術分野でも当てはまるのか、大学の役割(先端的研究を行う大学と、地方大学)に応じた違いはないのか、を検証するため、一部の大学・学部に対して、研究成果の知的財産権取得を促さず、むしろコモンズとすることをそれぞれの戦略として採ることができるようにしてはどうだろうか。

その上で、数年後、それぞれの大学の技術移転について、ユーザー側の評価をレビューしてみるとよいように思う。

この主張は、「技術移転促進の目的にかなっているか実証しようよー」というトンデモ主張なのだが、面白いとおもいません?

(注1)施行当時は産業活力再生特別措置法30条をさす。現在は、産業技術力強化法19条(平成19年改正による)。
(注2)産業活力再生特別措置法55条(平成19年改正前は31条)で明示されている。
(注3)ワシントン州立大学の知的財産を管理する団体はBluetooth規格に含まれる特許権を行使し、主要な通信・電気機器メーカーを相手取り訴訟を提起した。
(注4)宮田由紀夫『プロパテント政策と大学』(世界思想社、2007年)125頁。
(注5)前掲・宮田はその立場に立つように読める。もっとも、筆者は宮田教授の主張には肯定できない面がある(これは後日)。
posted by かんぞう at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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