2008年10月11日

[知財一般]競争法を厳格に適用しないようにして消費者の利益につなげた例

競争法は厳格に適用すると望ましい結果をもたらさない、との判断のもと、(明示的にせよ黙示的にせよ)セーフハーバーを設けたことが、結果としてよい効果を生むことがあるようだ。

山田肇さんの著書(注1)によると、米国で研究フォーラムやフォーラム標準が進んでいなかったのは、米国の競争法当局が共同研究に対して厳しい姿勢であったからという。これが打ち破られる契機となったのが、1984年に制定された国家共同研究法(現在はNCRPAと略称されている。)(注2)とのことだ。

厳密には、排除された企業が不利益を受ける場合もあるだろうし、消費者にとって寄り望ましい技術がフォーラム内の妥協によって採用されないなどという場合もあろう。競争法上、そこまで詰めることは望ましくない、との政策判断が結果としては好評価できるものをもたらした事例なのだろう。

現在、標準化に関して、特許利用料に関する議論が行われると、買い手カルテルや売り手カルテルが生じるのではないか、という懸念がある。先日参加したシンポジウムでは、DOJの行政官は、IEEEなどのフォーラム型標準化団体(注3)内での特許利用料に関する共同交渉は、全体としての利用料を引き下げ、消費者の利益につながるものと考えられるから、萎縮的にならないでほしいと強調されていた(注4)。

これも場合によってはライセンサーにとって望ましくない結果をもたらしかねない。しかし、政策的な判断からそこまで踏み込まない、ということなのだろう。同シンポジウムの他の議論では累積ロイヤリティの問題が取り上げられていた。共同交渉が本当に許容されるなら解消に資するだろう。これも社会的には良い結果につながるのかもしれない。
(注1)山田肇『標準化戦争への理論武装』税務経理協会(2007年)58頁−59頁。
(注2)15 U.S.C. §§4301-06。共同研究組織の設立後90日以内にDOJ、FTCに届出を行うと、反トラスト法違反とされても懲罰的賠償責任を負わなくて良い(通常の賠償責任に留まる)というもの。なお、標準化団体に関しては、2004年にさらに改正され、Standards Development Organization Act of 2004が規律している。
(注3)ここではデジュールの標準化団体は含まない。
(注4)「シンポジウム:グローバル時代の特許活用〜パテントプールが導く成功への道〜」(2008年10月7日)〔ヒル・ウェルフォード発言〕。
posted by かんぞう at 23:55| Comment(2) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本経済新聞フォーラム「パテントプール」にご参加いただいたようで、ブログを拝見いたしました。 プログラムがお役に立てたようで、フォーラム企画した関係者としてはよろこんでいます。
Posted by sisveljp at 2008年10月22日 23:39
コメントをありがとうございます。
大変勉強になるフォーラムでした。あのような機会を設けていただいたこと、心からお礼申し上げます。
Posted by かんぞう at 2008年10月26日 12:54
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