2008年09月11日

[著作権]編集著作物の一部を構成する著作物で、入手が不可能なものを図書館が他の図書館のために複製することってどう扱われるんだろう(その1)

重箱の隅をつつくようなお話で恐縮だが、友人から面白い問題提起があった。
編集著作物に掲載されている著作物の所蔵を、ある図書館が希望している。しかし、当該編集著作物全体は当該図書館にとって不要である。また、当該著作物自体は抜き刷りの形で関係者のみに配布されており、入手できない。他方、当該編集著作物自体は市場で(若干の困難は伴うが)入手可能である。この場合、当該と書簡が当該編集著作物を所蔵する他の図書館に当該著作物の部分のみの複写物を求めることは、著作権法31条3項との関係で問題ないか(先方の違法行為を促すことにならないか)。

そんな場面あり得るんかい?とお思いの方は、過激なヌード写真や、名誉毀損になりかねない記事が掲載された週刊誌中に、有益な論文が掲載されている状況をご想像いただきたい。
公的な図書館であれば、このような図書の購入を躊躇してしまうだろうし、購入を巡って批判もあるかもしれない。しかし、例えば大学図書館であるときには、利用者の事情からあらかじめ収蔵が望ましい著作物は、複製をしたいだろう。

あるいは、プレミアがつくなどして、市場で入手するときわめて高いが、ほしい部分はほんの一部であって、購入には躊躇するという場合も考えられる。

この問題は、31条3項に言う「入手することが困難な図書館資料」って編集著作物に含まれる著作物の場合にはどう解すればいいの?というところにあるだろう。解釈のポイントは2つある。「入手することが困難」の意味と、編集著作物に含まれる著作物の場合についての「図書館資料」の意味である。

■検討
□「入手することが困難」って?

一般的な解説によれば、「一般市場にはもう入手することが出来ない」「絶版等の事情がある」場合を指し、「予算不足」は含まれないとされている(注1)。他方、図書館実務に関わる方と権利者の間の感覚ではもう少し緩やかな解釈が一般的である可能性が窺える(注2)。

□編集著作物に含まれる著作物の著作権法31条3項上の取り扱い

文言上は一意に決することが困難ではある。
ただ、「入手することが困難」の解釈で、市場での入手可能性を問題にするならば、編集著作物全体としてであっても市場で入手できるならば、図書館資料とは市場から見た資料を一単位と解するべきとの理解が、説明としては不整合感がないように思われる。
他方、多少なりとも利用者の利便性や、図書館の公共性を考慮するならば、決定的な解釈は難しいのではないか。

□今後考えるポイント
では、どう解することが適切なのか。
まずは31条3項の意味を考える必要があろう。
一般的な解説が、「30条以下は限定列挙であるから限定的に解釈しなければならないという考え」に支えられているとすれば、そのような一般的な命題には異論のあるところであることは指摘しておきたい(注3)。
なかなか手がかりが無く考えにくいところであるので、制度の意義については次回考えていきたい。

(注1)加戸守行『著作権法逐条講義 四訂新版』(著作権情報センター、2003年)241頁、中山信弘『著作権法』(有斐閣、2007年)256頁。
(注2)図書を提供する場合(つまりそもそも適法)についてではあるが、日本図書館協会「図書館間協力で借り受けた図書の複製に関するガイドライン」では、高価な場合ですぐに予算確保できない場合は入手することが困難との理解をされているように読める。
(注3)中山・前掲(注1)241頁参照。ほか、本ブログ「[著作権]行政目的の複製に対する複製権の制限(著作権法42条1項)に公衆送信権は含まれると解するべきか?」参照。
posted by かんぞう at 02:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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