2008年09月01日

[知財一般] 地方自治体の知的財産戦略の意味についての私見

知的財産立国が唱えられて数年後、多くの都道府県、政令指定都市で知的財産戦略が定められた。その後、制定の動きは鈍っている印象を受けるが、政府の定める「知的財産推進計画2008」において明記されているように、地方自治体による戦略策定は依然として求められている。

しかし、地方自治体が知的財産戦略を定める意味については、以下のような疑問も存在するようである。
○自らが事業を行っていない地方自治体が企業と同じように知的財産戦略を定めるのは意味がない。
○知的財産制度の政策決定権を持たない地方自治体が戦略を定める意味は乏しい。

これらの意見は、民間事業者の知的財産戦略や、国の知的財産戦略と同じものが地方自治体に求められていると理解したことから生じる疑問であるように思う。だが、地方自治体に望まれる知的財産戦略とは、民間事業者や国に望まれる戦略と異なる性格もあわせて有しているものと考える。以下、地方自治体に望まれる知的財産戦略の性格を考え、知的財産戦略を定める意味の有無を検討した。

■地域の経済振興施策方針としての知的財産戦略
私は、地方自治体において特徴的に求められる性格は、地域の経済振興施策方針としての戦略であると考える。
知的財産の中でも知的財産権として保護されているものは、経済活動において法的に保護する必要性が高いと歴史的に考えられてきたものから構成されている。それゆえ、経験則からは、知的財産として保護されるものが、経済活動において中心的な利益の源泉と考えられる。
この利益の源泉に関する施策メニューを整理し、明示することで、中長期にわたって一貫した経済振興策が展開され、民間の事業者は将来の支援を織り込んだ事業展開が可能となる。他方、自治体の側は、経済振興施策がぶれないようにするツールとしてもつかうことができる。
このような経済振興策は地域の活性化につながることであり、有権者の同意が得られる限りにおいて(注1)望ましい取り組みといえる。

■地方自治体の知的財産戦略が有しうる他の性格
もちろん、地方自治体が知的財産権を保有している場合もある。たとえば、公設試験場などが知的財産権、とりわけ産業財産権の取得を行っている場合が典型的である。この場合、自治体に帰属する知的財産権の活用戦略を記述することもあり得る。これは、自己の財産の処分戦略であり、定める意味はある。
さらに、地域の産業状況によっては、国に望ましい制度のあり方を唱えるものとしても機能することがあり得る。典型的には、バイオ産業の集積がある場合には、地域としての政策への態度を示すことも可能だろう。

■地域の知的財産戦略は経済振興策の中心的な方針の一つとして定めることには意味がある
以上のように、地域の知的財産戦略策定は意味があるといえると私は考える。また、その性格は大きく3つの分けられると考える。
ただし、本当に意味があるものにするためには、地域の実情、強み・弱みをふまえたものであることが望まれる。

(注1)ここで限定をつけた理由は、市場の失敗を補う場合のように公的セクターの介入が必須の場面ではないからである。
posted by かんぞう at 14:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆知財一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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