2008年07月27日

[著作権]米国著作権法における著作権侵害訴訟にあたっての制度上の違いについての覚え書き

(2008年8月6日修正)
以下の記事は重要な点で誤りがありました。
2005年の著作権法改正で、登録または仮登録が必須の要件となっていました…。
ご指摘いただいたタコさん、ありがとうございます。

↓以下、間違い↓

スザンヌ・スコッチマー(著)=青木 玲子 (監訳)=安藤 至大 (訳)『知財創出イノベーションとインセンティブ』(日本評論社、2008年)は、イノベーションに資する制度とは何かを丁寧に経済学的な分析によって検討する興味深い本であるが、その中で訳の誤り、もしくは、原著者の表現が足らなかったところと思われる箇所があった。
同書では(アメリカにおいて)「依然として著作物の登録は必要であり、登録をしていないと訴訟が提起できない」旨の記述がある。

これは少なくとも「実質的には訴訟が行われない」の誤りであると思う。

上記の記述が指しているのは米国著作権法の412条(注1)であるが、同条によると、法定の損害賠償規定の適用(一定額の範囲の損害賠償が逸失利益に関係なく保障される)と、弁護士費用の填補が受けられるようになるだけである。
第412条 侵害に対する一定の救済の前提要件としての登録
第106A条(a)に基づく著作者の権利に対する侵害につき提起された訴訟または第411条(b)に基づき提起された訴訟を除く本編に基づく全ての訴訟においては、以下のいずれかの場合、第504条および第505条に定める法定損害賠償金または弁護士報酬は認められない。
(1)(略)
(2)
著作物の最初の発行前かつ登録の発効日前に開始された著作権の侵害。ただし、登録が著作物の最初の発行後3ヶ月以内になされた場合を除く。
(出所:著作権情報センター http://www.cric.or.jp/gaikoku/america/america.html

法定の損害賠償金は、30000ドル未満(2008年7月の為替レートでは約320万円)の賠償を保障している(なお、故意侵害であれば15万ドルにも及ぶ)。高額な賠償であり、著作権者には有利ではあるが、これ以外にも侵害者の利益の額を以て損害賠償の額とする規定(504条(a))もある。そうであるならば、損害賠償を得るためには著作物の登録が事実上必須といえない。まして、差し止め請求訴訟は登録の有無に関わらない。

もし、訴訟が提起できないとされるのであれば、その要因は、弁護士費用の填補が大きく関わっているのかもしれない。近年、知的財産紛争に関わるコストが増大していることが指摘されている(注2)。

この点は、本来であれば原文で確かめるべきではあるが、参考のため指摘した次第である。

(注1)17 U.S.C.S 412
(注2)James E. Bessen&Michael J. Meurer, Patent Failure: How Judges, Bureaucrats, and Lawyers Put Innovators at Risk, Princeton Univ PRESS 2008など参照。
posted by かんぞう at 20:05| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも興味深く拝見させて頂き、コメントを書こうと思ったものもあったのですが、気がついたらそのまま過ぎてしまいました。ということで、久しぶりにコメントさせて頂きます。
参照された条文の翻訳は2000年にアップされたもののようですが、米国著作権法は改正が頻繁になされているので、最新のものを参照された方がいいと思います。
以下のサイト、
http://www.copyright.gov/title17/
などを参照されるといいと思います。
411条、412条に記載されている通り、著作権の侵害訴訟を提起するには、著作物の登録が事実上必須で(411条)、さらに、損害賠償を得るには所定の条件を満たすことも必要です(412条)。

取り急ぎ、以上です。
Posted by タコ at 2008年07月31日 02:28
タコさん、重要な指摘ありがとうございます。
こんな重要な条文を改正しているとは夢思いませんでした…。
常に基本に立ち返らないといけないことを痛感しました。本当に感謝いたします。
Posted by かんぞう at 2008年08月06日 00:48
念のため追記です(最初のコメントは大雑把すぎたかもしれません)。

登録が訴訟要件であることは、2005年の改正で追加されたものではなく、ずーっと昔からそうだったと理解しています。逆に、米国が1989年にベルヌ条約に加盟したときに、ベルヌ条約を本国とする著作物については登録を訴訟要件とはしないと改正され、さらに1998年の改正で米国を本国とする著作物でなければ登録は訴訟要件とされなくなったのではないでしょうか。2005年の改正はpreregistrationに関するちょっとした(?)改正だと理解しています。ただ、以前から変わらず、損害賠償や弁護士費用を得るには原則として登録が必要とされているので(412条)、実質的には米国以外の著作物についても登録することが訴訟を起こす前提となっている、と理解しています。

・・・と、知ったフリをしていますが、実は私も「著作権登録は訴訟要件である」というのを条文で確認したのは初めてでした。数年前にそういうことを聞いて、「え?そうなの?」とびっくりした記憶は明確に残っているのですが(笑)。おかげさまで、少しは勉強になりました(笑)。そんななので、上記の理解が本当に正しいのか、100%の自信はありません。申し訳ありません。でも、何かのご参考になれば。。。
Posted by タコ at 2008年08月09日 02:26
お返事が遅れて申し訳ありません。
更なるご教示ありがとうございます。

私が大きな勘違いをしていましたね。その点をお教えいただいてありがとうございます。
その他の著作権改正の過程も併せて一度きちんと勉強してみます…。

それにしても、米国著作権法、奥が深いですね。
Posted by かんぞう at 2008年08月16日 16:49
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