2008年07月04日

[意匠]米国で意匠出願が少ない理由がわからない…

米国の意匠(特許)出願件数に注目すると、GDPとの比較でも、特許出願数との比較でも、他の主要な地域(日本を含む)に比べ、出願件数が圧倒的に少ない(注1)。

その要因は何なのだろうか?考えられるのは2点である。

■産業構造上の要因か?
一つは、産業構造として、意匠の保護が必要ないという可能性が考えられる。
企業が既に合理的な知的財産戦略をとっていると仮定すると、主要な国における出願が多い製品分野の産業が米国に少ない場合、「産業構造が原因である」と言える。そこで確かめてみると、意匠出願を積極的に行っているのは、「衣服及び身の回り品」「生活用品」「住宅設備用品」「事務用品及び販売用品」「電気電子機器器具及び通信機械器具」である。
これを米国の産業構造と照らし合わせてみる(注2)。
米国では、化学、食品、組立金属製品、コンピュータ産業が強い。
前者二つは意匠出願には結びつかないのかな…と思える産業である。コンピュータ産業については電気電子機器器具分野に入るので、意匠出願にも結びつきそうなのだが…。
一定の説明はつきそうであるであるが、自信はない。

■制度上の要因か?
あるいは制度上の要因も考えられる。意匠制度が使いにくい、意匠制度以外の保護が効果である、との2通りの可能性である。

意匠制度自体をみると、日本に比べ保護期間が14年と短い、グレースピリオドがあり1年間は権利が安定しないということがネックとなっている可能性はある。特に、デザインはその寿命が長くないと言われており、意匠出願を抑制する可能性はある。実務的にはどうなのであろうか?

他方、トレードドレスの保護が意匠出願を少なくしている要因とする見解もある(注3)。トレードドレスは、出所識別性がある、または、使用により識別力を獲得したものについて、誤認混同を防ぐ制度である。機能的形状は除外されているようである(注4)。なるほど意匠出願数を減らす可能性はあるが、形状の保護という観点では日本の不正競争防止法と差はない。日本に比べ出願数が少ない理由にはならないのではないか。
もっとも、日本においては不正競争防止法による保護が重視されておらず(注5)、米国ではトレードドレスによる保護が重視されている可能性もある。これも実務的にどうか気になるところである。

(注1)特許庁「平成18年度 意匠出願動向調査報告書 マクロ調査 (要約版)-」(2007年)19頁以下
http://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/isyou_syouhyou-houkoku/isyou_macro_cyousa.pdf
(注2)さしあたって「産業構造変化と経済成長(総括)」『3rdworldman's Blog』(Tooru Ozawaさん)を参照。
(注3)前掲注1・20頁。
(注4)制度の概要については、アーサー・R・ミラー=マイケル・H・デービス(著)藤野仁三(訳)『アメリカ知的財産権法』(八朔社、2008年)、板垣忠文「米国における「Trade Dress」の保護について」パテント Vol.60 No.4(2007年)76頁以下参照。
(注5)もっとも、特許庁「平成18年度 意匠出願動向調査報告書 デザインの開発・管理・保護・出願戦略に関する調査(要約版)」(2007年)5頁
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/isyou_syouhyou-houkoku.htm
を見る限りでは、不正競争防止法の活用が少ないとは思えない。
posted by かんぞう at 20:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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