2011年01月19日

[著作権]まねきTV事件最高裁判決のロジックに対する疑問点(tweet並の短さで簡単に)

(さっきの記事のエッセンスをざくっとまとめてみました)
最高裁判決についてはそのロジックに疑問がある。なぜ送信の主体をそのように言えるのかがわからない。
また、これまでの裁判例で示された規範と違って、直接の侵害行為として解釈されている。この解釈が一般化できるのであれば、相当に射程が広い規範になる。とんでもない影響を与えないだろうか。
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[著作権][時事]まねきTV事件最高裁判決のロジックを読み解く...試み

テレビ放送の転送サービスや楽曲のオンラインストレージサービスについては、複数の下級審例があった。例えば、選録見撮事件やMYUTA事件、そしてロクラク事件、まねきTV事件である。

とくに最後のまねきTV事件は、テレビ放送された番組を録画し特定の者に送信する機器を預かり管理するビジネスに対して、知的財産高等裁判所はその形態を詳細に検討した上で著作権侵害を否定したことから、さまざまな注目を浴びてきた。まねきTVのポイントは、1つの機器から1人のユーザーにしか送信を行わないところにあった。私的複製として反論できるように工夫されていた。

しかし、昨日(2010年1月18日)に下された同事件上告審の判決では、最高裁判所は原審の判断に不足があると認定し、審理を差し戻したようである。ここでは簡単にそのロジックを読み解いてみたい(そして、どうも私には自信が無いという微妙な雰囲気を感じ取っていただき、諸兄・姉のお教えを頂きたい...)。

■まねきTV事件最高裁判決のロジック:カラオケ法理ではなく「送信可能化」主体の解釈
まねきTV事件最高裁判決(最判H23・1・18(平成21(受)653)は、これまでの選録見撮事件やMYUTA事件、そしてまねきTV事件でとられた、いわゆる「カラオケ法理」(注1)−行為の支配性や営利性があれば直接侵害主体と看做す法理−に準拠しなかった。

最高裁判所は、(私の読み方が誤っていなければ)まねきTVが行っている行為は「公衆」への送信ではないものの、著作権法上、公衆送信権侵害の一つとなる送信可能化にあたると判断している(ただし、注意していただきたいのは、著作権侵害にあたると明示的には述べていない(注2))。

送信可能化にあたると評価したロジックが私には理解しづらいのだが、おそらく、次のロジックに立っていると私は解釈した。
・公衆が利用する回線に接続されており、情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、ある主体から公衆(他の主体)に送信を行っていれば自動公衆送信装置と評価できる(たとえ単一の機器宛に送信する機能しかなかったとしても)
→この装置に情報を入力する行為は送信可能化にあたる
→なお、自動公衆送信の主体とは、装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当
→本件の自動公衆送信の主体はまねきTVサービス提供者であり、受信者は右主体から見ると不特定の者であり公衆である
→故に、上記の自動公衆送信装置で録画した放送番組を受信者(他の主体)に送信するように出来ることは送信可能化行為である
(→これが公衆送信権侵害にあたるかは、下級審で再審理される必要がある)

詳細な判決文(一部)は以下の通りである。
自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると、その主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり、当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、各ベースステーションは、インターネットに接続することにより、入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり、本件サービスにおいては、ベースステーションがインターネットに接続しており、ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は、ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し、当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上、ベースステーションをその事務所に設置し、これを管理しているというのであるから、利用者がベースステーションを所有しているとしても、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして、何人も、被上告人との関係等を問題にされることなく、被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって、送信の主体である被上告人からみて、本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たる


■若干の検討
「装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者」を自動公衆送信の主体と規範的に判断した点がポイントであると思われるが、このことの影響は少なくないように思われる。

例えば、オンラインストレージや(それに類似しているが)ネットプリントサービスに影響を与えることが想定される。オンラインストレージ等はそのサービス提供者が自動公衆送信の主体となることは間違いないだろう。通常、利用者はクローズな場であると認識しているので、場合によっては利用者にとっての私的複製によって複製された著作物を、これらのオンラインストレージ等に取り込むことがある。

しかし、オンラインストレージからの送信主体は(私の理解が間違っていなければ)上記の最高裁判所の判断基準では、同サービスの提供者である。そのサービスの提供者から見れば、ユーザーは不特定多数にあたる。つまり、オンラインストレージへアップロードされたファイルを送信可能な状態にすることは、公衆への送信可能化行為と評価できる。判決ではそこから先へは踏み込まれていないものの、通常は公衆送信権侵害が素直に認められるだろう。

そうだとして、このような行為は、規範的に見て望ましくない行為なのだろうか。私にはそうは思えない。
最高裁判決のロジックを一般化できるとすると、その規範は妥当性に欠けていると私は思う(注3)。

■余談ではあるが:海外への配信サービスは実現してほしい
さて、これらの事件は、テレビ局が海外向けの配信を行っていないところ、海外から日本のテレビ放送を見たい、というニーズに対応したことにより生じたものである。

もちろん、テレビ局がオンデマンド型の配信に躊躇う理由はわかる。おそらく次の3つが主な者だろう。
・映像コンテンツはデータサイズが大きく、配信のためのプラットフォームへの多額の投資が求められる(悪いことに、番組制作費すら削る現状では投資はしづらい。なお、コンテンツに拠る収入を直接得るためには既存のプラットフォーム(Youtubeなど)は使うことが出来ない)。
・NHKを除けば、広告収入ビジネスモデルをとっているところ、オンデマンド配信は、時間や視聴率に応じた広告料設定というビジネスモデルの根幹を揺るがしかねないため手を出しづらい。(とくに国内でオンデマンドサービスをすると広告ビジネスモデルは崩壊する)
・契約慣行上、番組制作段階でオンデマンド配信(それどころか放送波での再放送すら)に関する許諾をとっていない場合が少なくない。また、海外での放送に関する許諾もとっていないばあいが少なくない。

だが、在外邦人は110万人(注4)、在外の日系人は200万人(注4)も存在し、しかも、海外の中では日本文化に親しみを持つ者も少なくない。日本国内の視聴率が落ちているのであるならば、海外に活路を見出すことも良いと思う。

とくに、私は在外邦人に触れる機会が少なくなかったため痛感しているのだが、在外邦人は日本のテレビ番組に飢えている。NHK BS以外のドラマ、バラエティが見たいと繰り替えす駐在員や学生は何人もいた。彼らの気持ちを思うと、なんとか海外向けオンデマンド配信を実現していただけないか…と思う。
(注1)やや古くなるが、本ブログで著作権の間接侵害に関する裁判所の判断基準のフローを整理している(2006年11月22日記事「[著作権]間接侵害についての整理」)。その中で、直接の侵害者と擬製するいわゆる「カラオケ法理」の一般化には批判があることに言及した。
(注2)考えにくいが、公衆送信権侵害について何らかの規範的な要素を加えた解釈がなされ、侵害にあたらないと判断される可能性もないわけではない。
(注3)ただし、最高裁判所が判決を書くにあたっては、知的財産権訴訟の知見を持つ方が調査官として携わっているはずである。そうであると、慎重な検討はなされているはずではある。あるいは私の読み間違いであるのかもしれない。
(注4)外務省『海外在留邦人数統計』
(注5)財団法人海外日系人協会調べ、
http://www.jadesas.or.jp/aboutnikkei/index.html
posted by かんぞう at 02:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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