2011年01月02日

[特許]特許要件を欠く発明に係る特許を受ける権利の侵害(毒餌誘引用ボックス事件)

東京地判H22.12.24(平成21(ワ)8813)最高裁判所Webサイト

■事実の概要
本件の主な事実関係は以下の通りである。
原告の代表者が毒餌誘引用ボックスに関する考案(以下、原告発明という)を行い、被告に対し提示をしたことを契機に、原告と被告は毒餌誘引用ボックスの共同開発を行うこととなった。その後、原告のアドバイスを受け、被告が原告発明を含む毒餌誘引用ボックスの考案を完成させ、原告の代表者を共同考案者とし、被告を単独の権利者とする、毒餌誘引用ボックスの考案についての実用新案登録出願(2008年6月4日出願、同年7月23日登録。以下、本件実用新案権という)を行った。しかし、2008円10月24日、本件実用新案権の放棄の手続がとられた。なお、登録後の2008年10月から本考案の実施品が被告により発売されている。

■原告の請求と被告の主張
原告は、原告発明を利用した本件考案について実用新案を受ける権利を承継していないと主張し、主位的には特許を受ける権利を損なったことが不法行為に該当するとして損害賠償を、予備的に商法512条に基づく報酬(営業の範囲内で行った他人のための行為に対する報酬請求権)を請求した。
これに対して被告は、主位的請求に対する反論として、原告発明は新規性、および、進歩性を欠くこと、予備的請求に対する反論として、被告から原告への委託はなかったこと、また、原告が提供した情報は新規性・進歩性を欠く無益な情報であり「他人のため」にしたことといえないことを挙げた。

■判旨
□特許受ける権利の侵害について
被告の反論の通り、原告発明は新規性および進歩性を欠くために特許を受ける権利を享受しないとして以下のように述べ請求を認めなかった。
原告発明1、2のいずれについても特許要件が認められず、原告発明について「特許を受ける権利」の侵害を観念することはできないから、被告による本件実用新案登録出願、本件実用新案権の放棄が原告の特許を受ける権利を侵害したとすることはできない

□報酬請求権について
以下のように述べ、請求を認めなかった。
被告製品は、そもそも原告と被告の共同開発品という位置付けだったのであり…(中略)…、A〔引用者注:原告代表者〕による上記の様々な意見やアドバイスも、共同開発者としての原告自身の利益を図るために行われたものということができるのであって、必ずしも被告に利益を与える意思で、被告のために行われたものと認めることはできない。
したがって、本件において、原告は、客観的にみて被告のためにする意思をもって被告製品の開発に関与したと認めることはできないから、被告に対し、商法512条の規定に基づく報酬金を請求することはできないというべきである。

■コメント
共同開発に至る場合には何らかの覚え書きを交わしておくことの必要性を表す事案であるとして、実務上示唆的な案件である。
特許法解釈の観点からは、特許を受ける権利の侵害の観念にあたって特許要件の充足を求めた点が気になる。というのも、前提が大きく異なるものの、職務発明の承継に基づく対価が問題となる場面では、特許を受ける権利の承継とそれによる対価請求権は認めつつ、新規性、進歩性を欠く場合には独占的利益を否定して、結果的に請求を退ける例(注1)が見られており、一見すると、異なる判断を示す裁判例があるように思われるからである。他の前例や学説についても調べたいところであるが、これは後日…。
(注1)例えば大阪地判H19.7.26.(平成18(ワ)7073号)。
posted by かんぞう at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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