2010年01月11日

[つぶやき]創作活動は税で支える方向にしないほうがよい

フランス政府が出資し、作成、公表された、パトリック=ゼルニクらによる報告書「創作活動とインターネット」(Patrick ZELNIK, Jacques TOUBON and Guillaume CERUTTI, "Creation et Internet" (2010)、いわゆるZelnick Report(Le rapport Zelnik))によると、
Google、MSN、Yahooなどの大手広告企業とインターネットサービスプロバイダ(ISP)に課税し、その税収を音楽および出版業界に対する助成金に当てることを提案している。
(出典:CNET Japan記事)(注1)
らしい。

■特別目的税による音楽・出版業界助成はこれら業界にとって望ましいのか
それ以上に日本にとって示唆がある点は、そもそも論として「税収を音楽および出版業界に対する助成金に当てることを提案している。」であろう。もしかすると、これを読んでわが国でもさらなる助成とそのための財源を検討するべきだ、という議論が起こるかもしれない。

もちろん、文化振興策としてそのような選択肢が選ばれてきたことはわかる。だが、そのような国費による助成を深める方向に進めていくことがが、創作者(クリエイター)やその頒布の仲介者(ディストリビューター)にとって望ましいことであるかどうかについては、私は疑問がある。

近年、税による助成を受けた者が説明責任を果たすことがますます求められるようになっている。税からの分配を受けたのであれば、その使途が目的において妥当で、額が適切なものであるか、情報を開示する必要が生じる。このようなことがクリエイティブな活動に向くのだろうか?クリエイティブな活動を行うためには、納税者の視点から見れば妥当でなく、不適切な出費を行うことも、必要なのではないだろうか。

そうであれば直接の助成でなく、たとえば出版・音楽を行う企業に対する寄付に対する控除税制の設立を求め、市民の意思に委ねたほうが、創作活動には適していないのだろうか(もちろん、控除も間接的な助成とみて、説明責任を求める声が生じる可能性はあるが…)。

特段の理論的な根拠のないつぶやきで恐縮だが、私は上記の提言が軽々に利用されないことを期待している。

■余談:その理由は適切なものか
CNETの記事によると、同報告書は上記の提案の理由として、
Googleは、音楽アーティストや書籍出版者に対する「何の配慮もなく利益を上げている」(前掲注1)
とのことであるが、原文を斜め読みしてみると、ここでいう利益は「広告による利益」を指しているようであり、しかもフランスの企業でないことを問題にしているようにも読める(もっとも、筆者の読解が誤っている可能性もある。フランス語に自信はない!)。(該当箇所は以下の通り)
Compte tenu de la taille du marche publicitaire sur internet, cette mesure pourrait a terme rapporter une dizaine de millions d'euros par an, acquittes principalement par les grandes societes operant des services supports de publicite en ligne telles que Google, Microsoft, AOL, Yahoo! ou encore Facebook.
(※文字中のアクサンテギュは省略。)

確かに、インターネット上で発生する利益の課税国についてはさまざまな思いのあるところであることはわかるが、それと「音楽アーティストや書籍出版者に対する配慮」と結びつけることには違和感がある(カウンターパンチのように、他の諸国からもフランスのサイトが広告から得た利益の分配を求めてくる可能性はないのだろうか?)。また、もし仮に自国の検索サイトでないから、という主張であるならば、情報が国境なく流れる環境にあっては筋の悪いものに見える。

(注1)CNET Japan(2010年1月8日)「フランスの報告書、グーグルやMSNへの課税による音楽業界などの助成を提案」
posted by かんぞう at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ●つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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