2009年09月02日

[特許]特許市場の形成とライセンス情報の開示

M. Lemley and N. Myhrvold, "How To Make A Patent Market", ____ Hofstra Law Review (2008)読書メモ

たった3ページのエッセイではあるが、StanfordのLemley教授とIntellectual VenturesのMyhrvold CEOの共著であり、大変興味深い。

■論文概要
特許権者がライセンス価格を秘匿しがちであるために、その価値について市場で価格形成が極めてなされにくい。
その結果、特許権侵害訴訟において当事者にとっても、陪審員にとっても(注1)合理的なロイヤリティの算定が困難となり、結果として、ホールドアップさせた特許権の利用者に対し、特許権者が不相当に高いロイヤリティを請求する事例につながっている。
特許の取引を成立させ、ホールドアップ問題を回避するためには、ライセンス条件の開示を行うことが手である。特許権者にとってライセンス条件は秘密であるべきだとの議論もあるが、全ての者がライセンス条件を開示するのであれば不利になることはない。

■特許流通促進の観点からは考えられる制度設計
おそらく、ここでは、ライセンスの相手方の開示は問題でなく、ロイヤリティ料(または料率)、ライセンスの期間に限って一律に開示する制度設計が志向されるのだろう。

特許流通促進という観点からは制度設計としては望ましい。(もちろん、ホールドアップ対策になる、という点も見逃すことは出来ないが、これは差止請求権の調整でも解決しうる)

共著者のミヤボルド氏のビジネスを考えると、この主張はうなづける。

ただし、特許権は自ら実施するものである側面が大きい。その点への配慮が気になる。論文からは十分に配慮しているとは読むことが出来ない。

■現実に開示されるであろう情報は有益な情報なの
しかし、注意しなければならない点がある。

我が国で特許権のライセンシーの保護制度のあり方を巡る議論で見られるように、ライセンス条件は必ずしも個々の特許権に紐づいているわけではない。
例えば、以下のような可能性がある。
・多数の特許権を対象としたクロスライセンス(この場合、個々の特許権の価値は常に十分に評価されているとは限らない)
・技術移転・ノウハウ移転の対価も含めたロイヤリティ料設定
・金銭以外での対価設定(たとえば、販売における協力関係の構築)

契約は柔軟な条件を設定できることが魅力である。その分、その内容は簡単に比較できない。そうであるならば、ライセンス条件の開示制度は期待した効果をあげることはできないだろう。

また、企業側は自社の交渉事情を明らかにしないためにも、契約条件に工夫を凝らして、秘匿する手段を追求するものと思われる。

(注1)米国の特許権侵害訴訟が前提となっていると考えられる。
posted by かんぞう at 06:23| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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