2009年08月18日

[商標]米国のトレードドレスの保護の詳細

教科書に書いてあることではあるのだが、備忘のため。

ランハム法第43条(a)では、トレードドレスが保護されるが、これまでの判例の積み重ねによって包装等のトレードドレスだけでなく、製品デザインのトレードドレスも保護されるようになった。しかし、後者は識別機能を有しているとは限らないため、二次的意味(secondary meaning、日本法でいう周知性に近い概念と見て(おおざっぱには)良いように思う)の獲得が求められる(注1)。
では何が包装と製品デザインを区分するのかが問題となるが、米国連邦最高裁判所は、Wal-Mart対Samara Brothers事件判決において、包装のトレードドレスは狭義に解されるべきであると示している(注2)。
we believe that courts should err on the side of caution and classify ambiguous trade dress as product design, thereby requiring secondary meaning


(注1)なお、アーサー・R・ミラー=マイケル・H・デービス(著)、藤野仁三(訳)『アメリカ知的財産権法』(八朔社、2008年)116頁は、「保護要件として二次的意味の確立を求めない製品デザインのトレードドレスの区別をルール化した」とあるが「保護要件として二次的意味の確立を求める製品デザインのトレードドレスの区別をルール化した」の誤りであろう。
(注2)芹澤先生のWebサイトに邦訳が掲載されている。
Wal-Mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.,529 U.S. 205(2000)
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2009年08月17日

[知財一般]北川善太郎「集積回路に関する知的財産条約」読書メモ

北川善太郎「集積回路に関する知的財産条約」法学論叢128巻4・5・6号(1991年)1頁-39頁読書メモ

WIPOが事務局が務める集積回路に関する知的財産条約は日米が反対に回ったために未発効となっているが、TRIPs協定35条に基づきその一部の遵守が求められていることから、同条約は無視できるものではない。

その条約の策定交渉に携わった北川名誉教授が、論点と日本の対応を詳細にまとめている。学術的に興味深い点を以下にまとめる。

■デザイン保護を行う条約と、製品保護を行う国内法
集積回路に関する知的財産条約と半導体集積回路の回路配置に関する法律(以下、国内法という)の決定的な違いは、前者がデザイン保護を行う(=製品となっているかは問題とならない)のに対し、条約に先駆けて策定した日本法は製品保護を行う点にある。
当時、半導体生産能力は圧倒的に日米に偏っていたために、欧州からデザイン保護制度としての主張がなされたと考えられるようだ(注1)。このまま条約を批准した場合に国内法の不備が生じてしまうため、国内法23条(間接侵害規定)が実質的にデザイン保護規定となっていると説明した経緯が存在している(注2)。
最終的に批准したものではないが、国内法23条の解釈に当たって参考になる。

■批准しなかった理由は内容に問題があるからではない
日本は最終的に批准しなかったが、その理由は、保護期間の短さ、侵害物品を組み込んだ製品に権利が及ぶか不明であること、善意取得者が悪意に転換したとき(=警告を受けたとき)の補償義務がないこと、などがあるようだが、条約の内容よりは米国との協調が批准しなかった理由にあるようだ(注3)。

(注1)北川善太郎「集積回路に関する知的財産条約」法学論叢128巻4・5・6号(1991年)11頁
(注2)北川・前掲注1 18頁
(注3)北川・前掲注1 32頁
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2009年08月16日

[特許]特許制度がなかったら

石井正『歴史のなかの特許 発明への報奨・所有権・賠償請求権』(晃洋書房、2009年)読書メモ(その2)

■同書から学んだところのポイント
1850年代から欧州では特許による独占の弊害を問題視する声が登場し、特許制度を廃止することを提言するものが少なからず見られるようになっていた。その中で、無審査であり、かつ、出願公開制度のない制度を有しており、制度に対する批判の高かったオランダは、1867年に特許付与を停止し、以後、1910年に特許制度が復活するまで、特許制度がない状況にあった。

この間、国民1人・時間当たりの生産額の増加率は欧州主要国で下位に位置することとなってしまった。
また、特許制度がない間、外国における出願も低調になってしまった(これについて、石井教授は自国の制度がオランダ人・企業の特許取得に対する意欲に影響したと分析する(石井[2009]175頁))(注1)。

結局のところ、特許制度を廃止してしまったことはオランダにとってプラスの結果を生まなかった。

■私見
歴史的なものとなってしまってはいるが、特許制度の効果を測る壮大な社会実験であったことが興味深い。

なお、自国の制度がオランダ人・企業の特許取得に対する意欲に影響したとする見方については、異なる可能性も指摘しておきたい。

出願にあたっては、企業内での体制整備や、代理人が必要となることが少なくない(少なくとも当時の外国出願先の一部は、パリ条約によって、現在とほぼ同様な詳細な明細書作成が必要であった)。自国に特許制度がないことによって、そのような体制や代理人が存在しないために、結果として出願に至らなかったのではないだろうか。

■参考記事
本ブログ「[特許]特許制度の歴史をポンチ絵にしてみる(その1)」(2009年7月7日記事)

(注1)制度復活後は外国出願数が急増しており、特許制度の不存在が出願行動に影響を与えた可能性は極めて高い。なお、この点はSchiff, E. Industrialization without National Patents: the Netherlands 1869-1912: Switzerland 1850-1907, Princeton University Press, 1971, p.46-48の分析による。
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2009年08月15日

[時事][特許]XML標準へのアウトサイダーからの特許権行使事例?

2009年8月12日、米国テキサス州東部地区連邦地方裁判所は、Microsoft社のMicrosoft Wordがi4i社(カナダ)のXML関連特許を侵害するとして、約2億9000万ドルの損害賠償、および、カスタムXMLを含む「.XML」「.DOCX」「.DOCM」などのXMLファイルを開くことができるMicrosoft Word関連製品の販売等の差し止めを命じた(注1)。

Microsoft社の製品の販売差し止めが命じられた、ということに特に注目が集まっているようだが、W3Cの標準規格であるXML規格に関連した特許権行使であることも気になる。

侵害が問題となった特許は、米国特許登録第5,787,449号(注2)である。素人目ながらクレームをざっと見ると、XML規格自体に関わるような広い特許であるように読める(注3)。

なお、XML規格の特許声明書の提出状況をみると、i4i社からの提出は見られない。

仮にそうであるとすると、XML標準規格へのアウトサイダーからの特許権行使事例として位置づけられるのではないか。標準規格に対する特許権の行使はこれまでも問題となってきたが、新たな事例がつけ加わることになる(注4)。

他方で、XML規格自体には関係ない可能性もうかがえる。

CNETニュースによると
「わたしたちは、Microsoftの事業を停止させることを求めているわけではないし、世界中のすべてのWordユーザーに干渉することも求めてはいない」とOwen氏は米国時間8月12日、電話インタビューの中で述べた。今週の判決は、i4iのカスタムXML技術を使用する形態でWordを出荷することのみを禁じる差し止め命令である、とOwen氏は付け加えた。
(出典:CNET Japan「「Word」を市場からなくすことが目標ではない--i4i会長、電話取材に応じる」(2009年8月14日翻訳記事)

とある。

そうであるならば、Microsoft Wordが独自に採用したCustom XMLのみが問題となったのかもしれない(しかし、XMLファイルを開くことができるMicrosoft Wordを差し止め対象としていることとは整合性がない)。私は関連の技術が全く分かっていないために判断できない。今後の詳細な解説を待ちたい。

余談ながら、注にも記したように、本件の特許権はそもそも有効なのか?というところの疑問は少なくない。しかし、原告(特許権者)勝訴の判決が下されたのは、陪審が既に特許権侵害を認定していたからであろう。

(注1)概略はITmedia News「Microsoft、米地裁から「Microsoft Word」販売差し止め命令」(2009年08月13日08時56分記事)に詳しい。
(注2)明細書はこちら
(注3)もっとも、そうであるがために、新規性を欠いているのではないか、との指摘がWeb上には存在する。
(注4)ただし、今回の当事者であるi4i社はいわゆるパテントトロールとはほど遠く、これまでもXMLに関連した製品開発を行っている。そのような背景がある中で、おそらく、無茶な特許権はしないであろうことが推測できる。
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2009年08月14日

[知財一般]企業活動のグローバル化=同一の知的財産権の国際的な出願の促進ではなさそう

市場がグローバル化していると言われているが、ある特定の製品・サービス(そして、組織)がグローバルに展開できるかというと、そうではないことをハーバード大のGhemawat教授は示している(注1)。

文化的、社会的な隔たりがある中で、隔たりが比較的小さい適切な国・地域で集約し効率化を図ったり、その隔たりをうまく活用したり、あるいは、隔たりに適応することが望ましい、とGhemawat教授は述べている。

とくに、研究開発集約度の高い産業では国・地域を超えた組織の集約戦略をとることが望ましい場合が多く、広告宣伝集約度の高い産業では国・地域への適応戦略をとることが望ましいようだ(注2)。

この指摘が正しいとすると、知的財産権の国際的出願を評価する際に、以下の点に留意するべきであることがわかる。

・制度的な障壁があり、同一の技術を国際的に展開できないような場合(たとえば、安全基準や国別の技術標準に適合しない(注3)場合)で、かつ、輸送にコストがかかるような製品に関する技術である場合、必ずしも国際的に特許を取得することは価値を有さない。たとえば個々の特許について三極出願を行っているか否かで、その特許の価値を評価する際には注意が必要である。
・広告宣伝集約度の高い産業では、同一の意匠について国際的に権利を取得していても必ずしも評価できない。企業ごとに見たときには、そのような産業においては、出願された意匠間のリンクがない方がよいのかもしれない(ただし、企業ブランド構築の基礎となるようなデザインについては例外であろう)。

(注1)パンカシ=ゲマワット(著)、望月衛(訳)『コークの味は国ごとに違うべきか』(文藝春秋、2009年)(原著:Pankaji Ghemawat, Redefining Global Strategy, Harvard Business School Press, 2007.)
(注2)前掲注1・ゲマワット(2009)315頁。
(注3)後者についてはISO等で国際標準規格とし、WTO/TBT協定に基づいて国内規格に影響を与えるという手はあるが…。
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2009年08月03日

[つぶやき]ブランドブームはいつくる?

知的財産権のうち、商標権・意匠権というツールを使う要因となるのが、ブランドによる競争力強化であると思う。ブランドと一口にいっても、切り口が様々にある。対象によって切るとするならば、企業、事業、製品の3つに分けることが出来ると考えられるが、そのうち、企業ブランド(コーポレートブランド)が日本で注目されるようになった理由を見てみるとおもしろい。

企業ブランドに近い概念で、最初に話題に上ったものが「CI(コーポレート・アイデンティティ)」だろう。CIは日本では2度話題になっている。
第1次ブームの1970年代の要因は
、(1)米国の流行の取り入れ
(2)オイルショック等による内需伸び低迷期における売上向上への期待
にあるようだ。
第2次ブームの1980年代の要因は
、(1)バブル経済に乗った企業イメージの刷新と社員の連帯意識の醸成への要請
(2)NTT分割・JR民営化の中での大手国営企業によるCIの導入インパクトの高さ
にあることと思われる(注1)。

他方、1990年代後半から生じた「企業ブランド構築」は、
(1)経営資源の中の無形資源をしめる大きな要素としてのブランド価値の認識
(2)連結決算への転換にあたってのグループのアイデンティ確立の必要性(それまではグループ内でも統一性を欠いていた)
(3)新興企業への対抗
にあるとの見解がある(注2)。

私は、直観的にはこれらがブームだったと言い切ることは出来ないと思っている。可能性の一つとして、企業ブランドをひとたび構築しても10年程度でその効果が途切れてしまうことにもあるのではないかと推測している。

いずれにせよ、企業ブランドが注目される波がもしもあるならば、2010年を過ぎたころかもしれない。そのようなときに、「ブランドを構築するための媒体・ツールをどのように他者から守るか」、「ブランドの核となるメッセージを伝える表現をどのように抑えて独占を目指すか」が重要になる。特許権に埋もれがちな商標権・意匠権もこのときは注目されるのではないか…と思う。

(注1)深見幸男『CI入門』(日本経済新聞社、1991年)を参照した。
(注2)伊藤良二『コーポレイトブランド戦略』(東洋経済新報社、第2版、2004年)16頁
posted by かんぞう at 19:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ●つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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