2008年01月29日

[意匠]Informed Userを判断主体として意匠の構成要素を重み付けし類比判断を行う手法

RCLIP22回に参加してきた。
五味飛鳥弁理士の類比判断基準に関する試論が展開されて非常に興味深かった。
サイバーさんとのお約束もあるので、まずは速報としてメモを…(整理に乏しくて恐縮だが)

■概要
人が「似ている」と判断する評価手法に注目したとき、同種のものとの共通点と差異点について、その物と判断主体との関係性から重み付けを行う、という前提から出発したとき、裁判例が近時一致して採用する類比判断基準(物品の使用態様等を考慮するほか、公然知られた意匠にかかるものと同一の意匠にかかる部位であるか等を考慮する基準(注1))は、似ていると判断する評価手法に親和性がある。この手法は、デザイン保護に適していると評価する(価値評価である)。
ただし、この手法(公知意匠との関係を考慮しつつ、通常の用法を考慮して要部を決する基準)の場合、双方の考慮要素に特徴がある要部の認定ができないことを問題である。
双方の考慮要素が独立してしまうのは、通常の用法を考慮する者が公知意匠を知らないという前提の場合であるから、これを回避するためには、判断主体を公知意匠についてよく知っている者(Informed User)であるとするとよい(なお、ここでOHIMの需要者の判断基準が参考になる)。

■私見
結果的には現状追認型の理論に見えるが、デザインの機能という基礎からのアプローチも試みられていらっしゃり面白い(もっとも、「似ている」と判断する評価手法はデザイン関係者の間では一般的な手法なのだろうか?私は知見が無いからわからないのだが…)。
質疑応答でも挙げられていたことではあるが、3条1項3号においても同様のことが言えるのか、理論的に詰めることができれば、すばらしい完成度になるのではないだろうか。
この試論が面白いところは、従来の創作説、需要説の枠にこだわらなかったところであるが、理論的なコアは創作説的なところにあるのかなぁといった印象であった。

(注1)典型的には〔ゴルフボールマーカー事件〕知財高判平成19年3月27日をあげていらっしゃった。
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2008年01月27日

[つぶやき]どうなる?米国特許法

最近、体調を崩してしまった。
お読みくださっている皆様もくれぐれも無理はなさらぬよう。

さて、昨年話題となった、アメリカ特許制度の先願主義への移行であるが、その後、どうなったか気になった。

で、調べてみて出てきた、特許法改正法案の修正条文案(先週公開されたらしい)。
ぱらぱらっと見てみると……わけがわからない……。
私の理解力が極めて不足しているところが主たる要因ではあるのだが、共同発明のときの例外やらなんやら…。
どなたかわかりやすい解説情報をご存知ないだろうか。

なお、主要な動向はJETROのページ「ニューヨーク発知財ニュース」で議会動向も併せて詳細に紹介されている。ここ。大変ありがたい情報である。が、今回の内容についての情報はまだ…。
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2008年01月19日

[著作権]コンテンツ産業への投資誘導施策は有効かもしれない

読売新聞2008年1月17日(東京版)に掲載された、土井宏文「著作権投資に減税を」は興味深い施策提起をしていた。

■論稿の概要
土井さんのロジックは次のようにまとめられる。
日本のコンテンツ産業は、(1)海外進出不足、(2)関与者による権益確保に起因する流通モデル革新の遅れ、(3)コンテンツ産業関係者の資金調達手法への理解不足、が課題である。それを解決しコンテンツ産業を振興するためには、国が直接投資を行うよりは、多くの諸外国が導入するようにコンテンツ産業への投資優遇税制をとるべきである。そうすると、(1)、(2)の解決につながるのではないか。

■コンテンツ産業への投資優遇税制策への私見
私はこの案に賛同したい。
知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会で議論されているところによると、現状のコンテンツ産業は、(1)条件の良くない創作環境、(2)プロデューサー人材の不足、(3)資金不足が課題であるとのことである。
(2)に対しては、政府は関連する大学の整備を押し進めているようであるから、あるいは解消されるのかもしれない(もっとも、私は、(1)の解消でそのような人材が自ずと集まると思うのだが)。
(1)は土井さんが問題とするように、流通モデルの問題に起因するところもあるように思われる。流通サイドは、流通チャンネルを限定することでクリエーターに対して自己の立場を優位に立つことが(理論上は)できる。それゆえ、流通モデルを革新させないインセンティブがある。
残された課題の(3)には投資優遇税制という解決策は効果的である。投資者がガバナンスを働かせる余地が生じ、流通モデル刷新や、クリエーターの創作インセンティブ向上策を働きかける可能性が生まれるように思う。

■留保したい点と注意点?
もっとも、同論稿では、「多くの国がコンテンツ産業への投資の優遇策を行っている」と述べていたが、これはどこまで正確なのだろうか。私は正確に把握していないので恐縮だが、少なくとも筆者が挙げていた英国、ドイツ、フランス、カナダでは、映画産業への優遇策を設けており、その中に投資優遇策が含まれていることは間違いなさそうである。

しかし、「コンテンツ産業」すべてに対して、ということは管見の限り見当たっていない。
上記の優遇策は、権力者あるいは国民の映画産業へのノスタルジーが生んだ政策である可能性や、映画産業と言うロビイストの活動の成果である可能性もある。諸手を上げて倣うべきというには精査が必要であると思う。

また、優遇税制は他国の制作現場に悪影響を与えかねず、国際問題となることもあるようだ(注1)。導入するならばそれなりの覚悟はいるのだろう。

(注1)たとえば、カナダの映画への優遇税制はハリウッドを害するものとしてアメリカから不満が挙っているという。なお、"Canadian province to extend film tax incentvies" Returners (2007/10/19)最終段参照。
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2008年01月15日

[つぶやき]音楽CDの不況に対する印象論

所用で中国に来ている。都市部であるとだいぶ物価が上がった印象を受ける。好景気の影響であろうか。食品であれば日本の1/2〜1/10とまちまちであるが、嗜好品である衣料(安物ではなくある程度おしゃれなものであるが)であると日本と変わらないか、3/4程度の値段である。家電にいたっては、日本のほうが安いものすらある。

■中国のCDの相対的な安さに思うこと
その中で、CDも例外ではないが、やはり日本に比べると安い。J-POPのアルバム(なお、正規品であり、中国頒布用であることが明示されているものである)であれば50元(およそ850円)で買うことができる(注1)。少なくとも日本の1/3であり、他の娯楽品・嗜好品に比べると格段に安いように思う。

中国国内に著作物再販制度があるのかはわからないし、日本と中国の文化の差もあるのだが、中国での相対的な音楽CDの安さを考えると、日本国内で現在の値段を維持することが適切かどうか、CDでの販売を行う音楽企業は考えた方がよいのではないか、とよけいなおせっかいすら考えてしまった。

少なくとも現在の音楽CDは、著作物再販制度によりレコード製作者が価格決定を行うことが出来(注2)、しかも、海外で安く生産・販売している同製品が流入することをある程度ふせいでいる。これらの保護が、というより、これらの保護があるという象徴的な意味が、音楽CD流通を巡る当事者の交渉力に影響し、価格を市場の均衡点に落ち着かせることを阻んでいるのではないか、とすら思えてしまう。(印象論ばかりで恐縮ではあるが…)

音楽CD業界も不況ということが指摘されている。これが、果たして違法ダウンロードによるものか、あるいは、私のいらぬ憶測によるところか、その複合的なところかは、調査が必要なところではないだろうか。(もちろん、著作物のダウンロード行為が0円で出来る以上、市場の自由に任せると際限なく価格を落とすことにつながり、音楽産業が破綻するのだ、という主張はわかる。わかるが、現在の価格が音楽離れ自体を起こしているのでは、と疑っているのである。)

■音楽CD産業と出版産業の不況の真の理由?
もっとも、より魅力的な娯楽の登場、というのも要因なのかもしれない。
人間が娯楽に使えるトータルの時間は決まっているわけであるから、1つの娯楽産業が伸びれば、他の娯楽関連産業は下火になろう。

たとえば、個人が家庭内で趣味として使う時間に注目してみる。
インターネットの利用時間は飛躍的に伸びているし、ゲーム産業は空前の規模になった。
他方、出版業界は不況である(注3)。音楽CDも出版産業と同じくこの影響を受けただけなのかもしれない。

(注1)なお、貧乏学生改め貧乏サラリーマンである私は3000円もするアルバムになかなか手が出せなかった。そうすると、こういうところで買ってしまう。もちろん、頒布目的でないので著作権113条5項にはひっかからない(笑)。
(注2)もちろん、レコード販売店が入荷数を決めることである程度の価格圧力が働くのかもしれないが。
(注3)商業統計によると、書籍・文具業の商品販売額(年額)は平成14年から16年で4兆8千億円から2兆9千億円に低下している。
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2008年01月09日

[特許][時事]秘密特許制度実現への本気度

昨年12月、本ブログ「[時事][特許]秘密特許制度の導入を検討しているらしい」で取り上げた秘密特許制度であるが、特許法を所管する上級官庁である経済産業省は本腰を入れていることが、NBLに寄せられた知的財産政策室長の論稿(注1)から窺えた。

論稿によると、技術情報流出対策が2008年度の知的財産政策の中心の一つであるとし、具体的な問題事例として、安全保障技術の流出事例が取り上げられていた。ここから上記のように読み取ったのであるが、もし間違っていたら恥ずかしい。(なお、平成20年度予算では特に記述されていない。お金がかかるものではないからかもしれないが。)

なお、秘密特許制度については、簡単に調べてみたところでも各国、異なる制度のようである。主には、「制限される内容は何か(とくに実施も制限されるか)」「異議を申し立てることができるか」「補償金を請求することができるか」が違いであると考えられる。

参考までに、いいかげんな調査結果を貼付ける。これは暫定版であるし、なぜ米、英、独との比較を選んだかと問われると、単に好みで、としか言えないような、いい加減な代物である。この点はご海容いただきたい。
secretpatent.jpg(出所:筆者作成。暫定版。)
(注1)中原裕彦「これからの知的財産法制の展望」NBL872号(2008年)37頁以下。

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2008年01月08日

[時事]弁理士試験内容改正の内容がわかった

かつて、私にもチャンスが!?と喜んでいた、弁理士試験内容の改正であるが、ついに内容がわかった。
特許庁「平成20年度弁理士試験のご案内〜平成20年度弁理士試験から試験制度が変わります〜」《JPOへのリンク》

その中に、
工業所有権に関する科目を一定単位以上修得し大学院の課程を修了した者は修了日から2年間短答式試験の一部科目が免除されます。(ただし、平成20年1月以降の進学者に限ります。)

とあるとおり、但し書きを見た瞬間、私の期待は打ち砕かれてしまった訳である。

これを見る限り、大学院課程修了者に対する試験免除は知的財産専門職大学院の修了者を対象としているようである。あとは、法科大学院卒業者が特許法の試験免除を受けられるくらいであろうか。
研究系大学院の授業では、制度の全容把握よりは、個々の解釈論、解釈の方法論を学ぶことが多いであろうから、試験免除の対象とすることは望ましくないようにも思う。そのことを考えれば、妥当な決定なのだろう。
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2008年01月07日

[意匠]意匠法3条にいう「公然知られた」の意味

意匠法3条1項1号、および、3条2項における「公然知られた」の意味を指摘するものとして、牛木理一「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号《牛木内外特許事務所へのリンク》論稿冒頭部より21頁が勉強になった。備忘のため記事とする。

〔電子オルガン事件〕(東京高判昭和54年5月30日)において、3条1項1号に言う「公然知られた」とは、3条1項2号が「頒布された刊行物」について規定していることとの関係を鑑みれば、「字義通り現実に知られている状態にあることを要する」(判決文)と示された。

上記判決に反する上級審判決がなく、上記判決は現在においても参考なると考えられる。なお、上記判決が示された当時は、3条2項は「広く知られた」との書き振りであったが、平成10年改正で「公然知られた」と改められたため、この理解は、3条2項にも当てはまるものと言える(牛木・前掲21頁)。

ただし、牛木弁理士は、商品カタログについては、刊行物公知にとどまらず、事実上の公知性を推認してもよいのではないかと述べられている(牛木・前掲21頁)。他方、牛木弁理士は、特許公報、意匠公報は、事実上の公知性を推認することは難しいと考えられているようだ。

実際上は、商品カタログの頒布の範囲などを考慮しなければならないように思うが、デザイン関係の慣行を考慮すれば、展示会などを通じて広く流布されるものについては牛木弁理士の説く理解があてはまるだろう。

特許公報、意匠公報については、当業者に限っては先行技術調査、先行意匠調査を行っていることが多い状況さえ確認できれば、事実上の公知性が推認できるように思う。実際のところはどうなのだろうか。
posted by かんぞう at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月06日

[意匠]意匠の類否判断主体を巡る見解の整理(暫定版)

意匠の登録要件としての、公知意匠との類否の判断主体については、いまだ勉強途上であるが、興味深い論稿に触れ、おおまかな整理を試みたのでここに紹介する。

本整理において大いに参考となったのは、牛木理一「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号《牛木内外特許事務所へのリンク。入手しにくい(注1)論稿をウェブで公開してくださる点、牛木先生に厚く感謝申し上げます。》、および、土肥一史「同一・類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)100頁−101頁である。
前者の論稿は、昨年施行された改正24項2項への強い反発の思いが表れていらっしゃるのか、全体としては若干読みづらくも感じられたが、重要判例として取り扱われる〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕(最判昭和49年3月19日民集28巻2号308頁)当時の制度背景と、それに沿った解釈論の適否を述べるものとしてはわかりやすかった。

■〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕の背景を鑑みた類否判断主体に関する解釈論の適否ご存知のように、〔可撓伸縮ホース事件最高裁判決〕は、3条1項3号は同一物品の公知意匠との類否は一般需要者を判断主体とする、と示した判決である。
佐藤繁調査官により、「物品混同説と結び付けて理解する向きがあるとすれば、おそらく判決の真意ではない」(注2)との指摘が当時からなされているが、少なくともいわゆる創作説(判断主体を当業者とするもの)を否定したものとして同判決は理解されているように思われる。
しかし、牛木弁理士は以下の難点を指摘する。
・3条1項1号〜3号に対応すると読める、無効審判の除斥期間に関する規定(旧49条)のうち、3条1項3号に対応すると考えられる旧49条3号は、当業者を基準として創作性を欠く意匠と明示していることと整合性を欠く
・仮に一般需要者における「混同」を問題にしているならば、物品に関わらず他人の業務にかかる物品との混同を生ずる恐れがある意匠の登録を禁止する5条2号があることの説明がつかない
・仮に一般需要者における「混同」を問題にしているならば、それまでの意匠法の制定、改正の沿革上、商標法や不正競争防止法との保護領域の観点からの検討が加えられたことがなく、異質の考慮である(意匠法は特許法や実用新案法と同じく創作保護法であり、特許法や実用新案法と同じく当業者間における登録の適否を判断するべきである)
特に、第1の指摘は説得的である。少なくとも、上記最高裁判決が出された当時においては、3条1項3号の判断主体を当業者とする理解(いわゆる創作説)の方が文理解釈上優れていたと私は考える(注3)。

■現在の法における各理解の優れている点、難点の整理
しかし、現在、旧49条3号規定は削除されている。また、その後の研究では、単に創作説と混同説という対立ではなく、いわゆる需要説という考え方も現れている(注4)。
また、24条2項が設けられたことも当時と異なっている。

そこで、それぞれの理解の優れている点、難点を考察し、おおまかであるが整理を試みた。非常に乱暴な整理であるが、私のような初学者が議論を考えるとっかかりとなるのではないかと考えている。詳細な点を省いている点はなにとぞご海容いただきたい。理解の誤りについては、ご指摘いただければ幸いである。

【混同説】
□概要
・意匠を見る者の注意を引きやすい部分について、一般の需要者が誤認・混同をするかにより判断する。(それゆえ、公知意匠であることを参酌しない=公知意匠も要部として認定されうる)
□根拠
・取引者・需要者による混同を排除しないと意匠権を保護する実質的意義を喪失するため。
□優れている点
・平成19年に改正された24条2項と整合する(なお、同項は権利行使の場面における類否判断主体について規定したものであるが、本理解によると登録要件と権利行使の場面における類否判断基準が一致することになる)。
・意匠登録されているものであれば(理論上は)出所混同が生じないことが保障される。
□難点
・5条3号(他人の物品と誤認混同する意匠の登録の禁止)の存在意義が説明しにくい。
・法制定・改正の沿革に沿わないとの指摘がある(注5)。
・部分意匠制度の導入により物品の混同を防ぐことが意匠法の目的との説明が困難になった(注6)。
・権利行使の場面での類否判断では、公知意匠を参酌する必要があり、理論的には美しくない(注7)。
※なお、一般需要者=常にエンドユーザーと理解するのであれば、部品として用いられる意匠について説明がつかない(注8)。

【需要説】
□概要
・新しい需要を起こすことが期待される構成を背景とする美観の異同により判断する。(それゆえ、公知意匠を参酌する=公知意匠は要部として認定しない)
□根拠
・意匠法の目的は、取引者・需要者にとっての意匠の機能の保護にあるとの理解。
□優れている点
・平成19年に改正された24条2項と整合する(なお、同項は権利行使の場面における類否判断主体について規定したものであるが、本理解によると登録要件と権利行使の場面における類否判断基準が一致することになる)。
・公知意匠を参酌する現状の運用と整合する。
・立証においては需要者へのアンケートを行うことにより統計的な立証が可能。
□難点
・法制定・改正の沿革に沿わないとの指摘がある(前掲注5参照)。
・意匠法の目的の理解としては一般的でない(?)。

【創作説】
□概要
・当業者にとって創作容易か否かをもって類否を判断する。(それゆえ公知意匠を参酌する)
□根拠
・意匠法の目的は、特許法・実用新案法と同じく当業者間における創作の保護であるとの理解。
□優れている点
・公知意匠を参酌する現状の運用と整合する。
・当業者にとっては(理論上は)類否判断が容易。
・5条3号との関係が説明しやすい。
□難点
・平成10年改正により3条1項3号、3条2項ともに「公然知られた」意匠との関係が問題となることとなったため(注9)、なぜ両条文に規定を分けたか説明が難しい。
・平成19年改正の24条2項との関係では整合性の面で美しくない。
・創作保護法との理解に基づく説明は、特許・実用新案がアイディアを保護しているのに対し、意匠が「表現」も関わる点を保護していることの差異を考慮すれば、決定的な理由とならない可能性がある。(言い換えると、表現である以上、需要者もそれをもって識別することになりうる。創作する意義が、外観によるの差別化にあるとするならば、意匠の意義として識別性を考慮することが適切と考えられる余地があると考えられる。)また、不正競争防止法的な観点を欠くという説明は5条3号の存在を説明できないのではないか。

(注1)経済産業調査会編『知財ぷりずむ』は入手が難しい。
(注2)佐藤繁「同一又は類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用」最高裁民事判例解説昭和49年(1974年)318頁。
(注3)積極的な賛否を述べるものではないが、土肥一史「同一・類似の物品の意匠と意匠法3条2項の適用〔可撓伸縮ホース事件〕」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)101頁は上記点を重視し、創作説を「当然にありえた」と評価されている。
(注4)鈴木將文「意匠の類否判断基準〔衣装ケース事件〕」別冊ジュリスト188号『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007年)102頁の整理に従った。なお、需要説は意匠が需要喚起につながっていることを鑑みて、需要者の観点からの類否を考えるべきとする理解である(その意味で、出発点は混同説に近い)。需要説について牛木弁護士の整理の中では触れられていない。混同説の1つとして整理されている可能性があるが、判断主体が混同説と同じとはいえ、アプローチが異なっており、後述するように難点についても差異が顕著であるように思われる。
(注5)牛木弁理士の指摘されるところであるが、疑問もある。意匠法の理解が広義の競争秩序維持法としての理解に変容していった、といえるのであれば、これまでの沿革は決定的な理由ではないように思われる。なお、知的財産法を広義の競争秩序維持法として理解する方向性を示唆するものとして、白石忠志『独占禁止法』(有斐閣、2006年)334頁。
(注6)鈴木・前掲注4 103頁。
(注7)私には「美しさ」の問題であるように思うが、この点は異論があるかもしれない。今後検討したい。
(注8)牛木理一・前掲「最高裁判決は絶対なのか−意匠法3条1項・2項の解釈と適用−」知財ぷりずむ2007年11月号、論稿冒頭より24頁目の批判は、需要者の理解をエンドユーザーとのみする説明を批判されており、混同説に対する批判としてはミスリードではないかと思われる。
(注9)それまでは、3条1項3号が「公然知られた」、3条2項が「広く知られた」と書き分けていた(牛木・前掲注8の論稿の指摘である)。
posted by かんぞう at 23:43| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[やるべきこと]著作権と憲法に関する論稿

奥村弁護士のブログ「奥村徹弁護士の見解」(2007年3月9日記事)で紹介されていた、
大林啓吾「表現の自由と著作権に関する憲法的考察――判例法理の批判から新たな議論の展開へ」大沢秀介『東アジアにおけるアメリカ憲法 憲法裁判の影響を中心に』(慶應義塾大学出版会、2006年
は面白そう。

奥村先生がまとめるところによると、日本の判例が著作権と表現の自由の関係について触れるところがないことを問題視されているようだ。

この指摘に対しては、
・日本の裁判例において、原告が著作権法上の規定に対し違憲の可能性を述べていたにもかかわらず黙殺された例が多いのか(逆に言うと、著者の主張に対しては「単に原告側から憲法上の問題が持ち出されなかっただけでは?」とも思う。)
という点が特に知りたい。
posted by かんぞう at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ○やるべきこと(自分用メモ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月02日

[つぶやき]本年もよろしくお願い申し上げます

あけましておめでとうございます。
めっきり更新頻度の落ちてしまった本ブログですが、勉強を続けていくために、このブログで備忘と、ささやかな情報発信と、意義深い情報交換ができればと思っております。今年も読者のみなさまから学ばせてください。
なにとぞよろしくお願い申し上げます。

さて、新年最初の記事は、意匠制度のハーモナイズについて気になっているところをまとめました。
ご覧いただければ幸いです。
posted by かんぞう at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ●つぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[意匠]意匠制度のハーモナイズに向けた課題:関連意匠制度をどうするか

知的財産推進計画において意匠制度についてだけ触れられていない国際的ハーモナイズ
知的財産制度の国際的ハーモナイゼーションに対しては、産業界を中心にニーズがあるところである。
『知的財産推進計画2007』(2006にしてもそうだが)には、特許商標の手続面での国際的ハーモナイズのみならず、実体面(権利内容面)でのハーモナイズについての議論への参加が明示されている。しかし、意匠制度の国際的ハーモナイズについては触れられていない。


■意匠制度におけるハーモナイゼーションの動き

意匠制度についてもハーモナイゼーションの動きはある。1999年に採択されたヘーグ協定ジュネーブアクトである(注1)。
2006年12月に米国が同協定批准の動きを見せているようであり(注2)、その後、米国内での議論は低調になっている感もある(注3)とはいえ、注目に値する。
同協定の内容は、大まかに言えば各国特許庁に国際出願を行うと、指定国特許庁がそれに対するリアクションを返すこととなり、リアクションがなされない場合は各国の登録意匠として登録される、というものである。

■意匠の保護に関するヘーグ協定ジュネーブアクト批准のための課題
この協定に日本は批准していない。批准にはいくつかの課題が挙げられている。最大の課題は、審査国への配慮が依然として足りていないところにあろう。実体上の制度的な差に対応する必要がある(注4)。中でも関連意匠制度の取り扱いは、ネックの一つとなっている。
この中で関連意匠制度に対する考慮が、ヘーグ協定ジュネーブアクトの中でなされなかった場合(つまり、協定の一部改正に至らなかった場合)、日本が批准するに当たっては青木弁理士が指摘(注5)するように、(a)関連意匠制度の廃止、(b)ヘーグ協定ルートでの出願を利用した場合の関連意匠制度の利用禁止、のいずれかで対処する必要がある。
しかし、現在、関連意匠制度の利用は全意匠出願の20%に至っており(注6)、この数字を見る限りでは(a)の選択肢を採ることは難しいかもしれない。

■課題のうち関連意匠制度に関する課題克服の可能性
もっとも、関連意匠制度がどのように用いられているか、その理由の分析いかんによっては、(a)の選択肢もありうるのではないか。
本来関連意匠はバリエーションを持たせた製品に対応するためである。この点のメリットは大きいが、実際、その理由でなされた出願はどの程度あるのだろうか。「とりあえず権利範囲が分からないから関連意匠として出願している」可能性もある。
また、仮にバリエーションをもたせた製品への対応を理由としていても、「要部となる点を共通としてバリエーションを持たせている場合」が多いのか、「要部となる点にバリエーションを持たせている場合」が多いのか、は興味深い点である。もし前者が圧倒的であれば、本来的には本意匠の類似の範囲となるはずであり、廃止をしてもそれほど不都合は無いのかもしれない(もっともバリエーションの類似部分は本意匠の権利範囲に含まれていないので、ユーザーにとってはつらいが)。
いずれにせよ、関連意匠制度がどのような理由で使われているかは知りたいところである。現在のところ、そのような研究は管見の限りなされていないようである。

(注1)なお、1960年に採択されたヘーグ協定ヘーグアクトも存在するが、これは実体審査国には受け入れにくい内容となっている。
(注2)澤井智毅「米国がヘーグ協定ジュネーブアクト批准手続を開始」(知財ニュース2006年11月15日)《JETROへのリンク》。
(注3)澤井智毅「上院外交委員会、知的財産関連三条約について公聴会開催」(知財ニュース2007年7月17日)《JETROへのリンク》。
(注4)「意匠に関するヘーグ新協定外交会議における日本政府の一般演説」《特許庁へのリンク》。
(注5)青木博通『知的財産権としてのブランドデザイン』(有斐閣、2007年)437頁。
(注6)特許庁編『特許行政年次報告書2007年版』(2007年)12頁。

(2008年1月5日誤字修正)
posted by かんぞう at 23:05| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆意匠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする