2006年12月31日

[時事]2006年を振り返って

2006年も終わりを迎える。
知財の世界でも、なかなか面白い動きがあったように思う。

法改正では、物品性を伴う画面デザインは意匠法で保護されることになった。
知財の侵害罪がそれぞれ引き上げられたのもインパクトがある。
もっとも、こちらは政治先行の決定で、果たして良いのか、という疑問はあろう(最新号のジュリストで中山教授が述べられたところであるが)。私自身は、刑を重くするならば、少なくとも著作権に関しては要件に絞りをかけるべきではないかと感じている。海賊版販売行為は、最高10年の懲役でもかまわないだろう。窃盗との対比ができるからである。しかしそれ以外の行為はどうか?幇助は?
知財の世界と刑法との対話、というのも今後重要になるのではないか。

裁判例でも興味深いものが続いた。
特許権の侵害に当たる行為としての修理・再生産をめぐる基準を示した〔インクカートリッジ事件知財高裁判決〕(1月31日)、知財高裁になって2つ目の知的財産権非侵害の場合の不法行為の成立を認めた〔通勤大学事件知財高裁判決〕(3月15日)、人のパブリシティについての〔ブブカスペシャル事件東京高裁判決〕(4月27日)、著作権延長の改正が適用開始期が争われた〔ローマの休日事件〕(東京地裁仮処分7月11日)、著作権間接侵害型のサービスについて非侵害とされた〔まねきTV事件〕(東京地裁仮処分8月4日、知財高裁12月22日)、著作物の道の利用についての譲渡が争われた〔キャロルDVD事件知財高裁判決〕(9月13日)、なかなかユニークな非登録事由を持ち出した〔赤毛のアン事件〕(9月20日)、営業誹謗が争われた〔キシリトールガム事件〕(10月16日)……挙げればキリが無いが、ここらへんは特に目を引かれるものであった。

来年の議論のテーマの一つは、リサーチツール特許などの川上特許について、差止請求権の濫用論であろうと思う。著作権については未知の利用が話題となろう。不正競争がらみではパブリシティの扱いだろうか。

知財の周辺の動きもあった。
経済産業省が進める『知的資産経営』もだいぶ広められてきたようだ。知的財産を生み出せる人材の力、というのを今一度経営側は見直して欲しい。簡単にクビに出来る人材だけを集めていて、果たして知識経済の中で競っていけるのか?じっくり人材を育てる、という古めかしいことが実は強みではなかったのか。

来年も面白いことを出来るだけ追って行く所存である。ごらん頂いてる方の情報収集のインデックスの一つや、自分のお考えを練るきっかけにしてもらえれば、と願っている。
posted by かんぞう at 15:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ★時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[商標]ひよこ立体商標事件控訴審ざっとメモ

新聞にも載った〔ひよこ立体商標事件控訴審〕知財高判平成18年11月29日(判例集未登載)平成17年(行ケ)第10673号をざっと読んでみた。

争点は、銘菓「ひよこ」のあの形態を立体商標登録していたところ(「通常有する形態」だからと、最初は拒絶されたのだが、後に周知なものと認められた経緯がある)、需要者は「ひよこ」の形態から商標権者は想起しないとして無効が求められたもの。

結局、歴史的(江戸時代まで遡った!)に鳥型の菓子がありふれていること、類似の菓子が多数あることから、出所識別性が乏しい、と判断して、周知性はあくまで「ひよこ」の名称が有しており、「ひよこの形態」は商標権者の営業標章として周知でない、と述べている。

最後に、素人的に面白いところを2点。
まず、「ひよこ」の歴史がささっとわかって面白い。
東京駅のひよこと福岡のひよこは姉妹会社だということ。
江戸時代に「虎屋」(あの虎屋!)が鳥形のお菓子をつくっていたこと。
次に、この判決文、途中に争点となった立体商標の画像や、類似する菓子の画像が埋め込まれているのである。しかも、カラー
裁判所もなかなか凝ってきた。
posted by かんぞう at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月29日

[著作権]宇宙戦艦ヤマトパチスロ事件

東京地判平成18年12月27日 平成16年(ワ)第13725号は、『宇宙戦艦ヤマト』をその著作者の許諾を得てパチスロの展開に用いたところ、『宇宙戦艦ヤマト』の映画の著作権を有すると主張するものから複製権ないし翻案権侵害とされた事件である。

結論としては、
・原告は映画の著作権を有していないと解される
・仮に著作権を有していたとしても、本件パチスロに用いられた宇宙戦艦ヤマトの映像のうち映画と同一性が感得できる部分は表現としてありふれているため翻案権侵害にも当たらない。
として、原告の主張を退けている。

『宇宙戦艦ヤマト』の映画の著作権の帰属に当たっては既に争われているところであり、かなりドロ沼化しているのかもしれない。それはさておき、本件は傍論ながら侵害の要否を判断した過程で、「ありふれた表現」を用いているが、そのありふれているとする根拠が面白い。
表現としての目新しさが無いとしているところがほとんどだが、対比表16部分については、ヤマトは戦時中の戦艦をモデルにしているのだから、「ありふれている」としているのだ。理論的には、むしろ先行の著作物ないし物に依拠したのだから、著作者の個性が表れていないとの処理で良いと思うのだが…。

いずれにせよ、マクロス事件と並んで映画の著作物の帰属に関する紛争事例が加わったとみることができよう。ただ、この判決PDFで179ページとやたら膨大なのが難点である。
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2006年12月24日

[著作権]写真の著作物性とthin copyright論

〔広告サイト写真著作物性事件控訴審〕知財高判平成18年3月29日(判例集未登載)平成17年(ネ)第10094号メモ

1.事案の概要
物品の広告・販売を行うサイトを運営するXが、その営業譲渡を受けた譲渡人の著作にかかる広告文および写真につき、文はデフォルメした形で、写真はそのまま使っているYに対し、著作権侵害に基づく損害賠償を求めた事案。

2.判旨のなかで注目すべき点
・写真の著作物性は一般に構図・光線・背景に求められるとの従来からの流れを汲む一方、創作性の高低があることを認め、創作性が低い場合には複製権はデッドコピーにしか及ばないとしている。
・創作性判断で、限界事例をどのようにあつかうかにつき、創作性は肯定した上で権利範囲で処理する事案のひとつ。
・しかし、本件はデッドコピーだから良いものの、そうでない場合、翻案権や同一性保持権の扱いはどうするのだろう…。翻案権はともかく同一性保持権はクリアすべき点が大きいのではないか。thin copyright論は同一性保持権が無いアメリカだからこそ使えるもの、とも思える。

なお、本件には三浦正広「判批」コピライト545号(2006年)43頁がある。
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2006年12月22日

[著作権][時事]まねきTVその後

長らく論文に取り掛かりきりで更新する余裕を失っていた。
その間に、ひよこ立体商標事件、winny刑事事件など興味深いものが出ていただけに、反応してこなかった力の無さがふがいない。

さて、著作権の間接侵害(民事)のまねきTV事件の知財高裁抗告審が出た(知財高決平成18年12月22日(判例集未登載)事件番号調査中)。
原決定を維持して「私的複製」を行う機器の「ハウジングサービス」にすぎないとの判断であったようだ。
素人目には、録画ネットと構造は変わらない。テレビ局としては、「地域」という要素を破るだけに、ビジネスモデルへの影響もあろう。つくづく法のぎりぎりの隙間をねらったソニーの戦略の面白さを痛感するところである。
posted by かんぞう at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする